交通事故にあった犬
 パース近郊の果樹園で働いていたときの事。ここの家の犬が交通事故にあった。道路を飛び出したために向かってきた車と衝突してしまった。すぐに動物病院らしきところに連れて行った。まぶたが切れ、前歯が下顎に突き刺さり、右前足が骨折の重傷だった。

 次の日犬を迎えに行くと、人間用のトイレにビニールシートを敷いて寝かせてあった。そして獣医らしき男は「大丈夫だ、2週間後にまた来て欲しい」と言う。その言葉を素直に受け止める事ができないまま、家路に着いた。

 その後、私が犬の世話係に抜擢された。朝は薬、夜はドックフードを細かく砕きミルクで溶いて与えた。しかし4、5日すると水以外何も口にしなくなった。前足のギブスをしている包帯から血液がにじんできた。ひどい悪臭がする。「感染をしているのではないか?」と思った。そしてまた病院らしき所へ連れて行った。

 しかし男は「特に問題はない、経過は良好だし食欲もじきに戻る」と。それから2日後前回と同様にひどい悪臭。男は「切断か安楽死のどちらかだ」と淡々と話した。私たちは「切断」を選んだ。翌日、切断後縫い合わされた皮膚が露出した状態で引き渡された。「消毒薬は?」という私の質問に対し「必要ない」と答え「蚊とハエに気を付けて欲しい」と男は言った。しかし翌日犬は死んでしまった。農村での医療知識の乏しさ設備の不十分さを感じ、助かっていたであろう命がとても悔しかった。